東京造形大学デザイン学科テキスタイル専攻の名誉教授 大橋 正芳さんが注目する、全国のテキスタイルをはじめとした展示紹介コラムです。「テキスタイル老師ぶらり旅」略して「テキぶら」どうぞお楽しみください。
倉敷の手織り②「いかご」
倉敷の手織りを3つ紹介します。
②は「いかご」です。
いかご・・・藺籠、つまりイグサのカゴ(藺草の籠)。
戦後の闇市で盛んに使われていたカゴを、倉敷では地産のイグサで作っていました。「やみカゴ」と呼ばれていたそうです。
それを復活して現在の生活に合うさまざまな製品を作り、販売しているのが「須浪商店」の5代目須浪隆貴さん、若い作り手です。
カゴは一般に素材を編んだり組んだりして作りますが、須浪さんは、イグサの縄を仕入れ、縄を織ってできた本体部分を組み上げ、取っ手をつけてカゴにします。
工房に置かれたイグサ縄を織るための自家製の織機。経は1本で、緯は作るカゴに応じて1本あるいは2、3本で織ります。
イグサの縄は硬いので経はビームに巻かず、一本一本箱に入れられていました。
このような織機があり、そして“織物”が織られているんですね・・・織物おそるべし!!
倉敷周辺はかつてはイグサの産地で、イグサを使った製品も作られていました。
須浪商店は1886年創業で主に花ゴザを織っていたそうですが、戦後にはいかごを作っていたことがあり、隆貴さんがお祖母さんからその技法を習って今につなげているそうです。
いかごは若い人に人気があり、いまや倉敷を代表する工芸品の一つとして評価されているようです。
倉敷の美観地区がある一帯はかつては海で、主に江戸時代になって干拓が進みましたが米作に向かず、イグサや綿花が栽培されたといいます。
中でも綿花が盛んで、それを背景に財をなしたのが倉敷の大原家です。大原孫三郎は社会貢献で知られていて、美観地区の保存にも力を尽くしました。
大原家旧居宅