2026.03.04

富士吉田で出会えた大好きな織物と向き合う仕事 宮下織物 木村早紀さん


「織物に関わる仕事がしたい。」

その想いを口にしたことが、富士吉田の宮下織物で働くきっかけになった木村早紀さん。伝統ある織物産地・富士吉田で、若い世代が織物と本気で向き合い、展示会や新しい試みにも挑戦する姿をご紹介します。

織物との出会いが、人生を動かす

ー織物職人さんになりたいと意識したのはいつ頃ですか?

私は武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻していたのですが、実習で手機(てばた)に触れた瞬間ビビッときて。その時「一生織物をやり続けたい!」って思いました。在学中は、絣【かすり:あらかじめ糸を部分的に染色し、斑に染まった糸で織り上げることで模様がかすれて見える織物の技法】や、もじり織【2本の経糸(たていと)をねじりながら緯糸(よこいと)と交差させる技法。糸の間に隙間が生まれるため通気性の良い織物】、ほぐし絣【仮織りした経糸に柄を捺染(なっせん)し、緯糸を抜きいてから経糸をほぐして織る技法】などにチャレンジして、卒業制作では経緯絣(たてよこがすり)にも挑戦しました。

 

ー織物がめちゃめちゃお好きなのですね!!宮下織物で働くきっかけは何だったのですか?

卒業後も織物を続けたくて東京の織物工場で働いていました。その後、織物の楽しさを多くの人に知ってほしいという思いもあり、ハタオリマチフェスティバルなどの企画をしている会社で働いていたのですが、たまたま宮下織物の社長が前職の代表に「織物の検反をできる人を探している」って相談をした際に、私が「織物に関わる仕事がしたいからこの産地で働きたいって」って言っていたのを思い出してくださって、紹介してくださりました。

ーそれってすごくないですか?普通、社員を育てているタイミングで紹介ってなかなかしないものですが…

しかも、そのお声がけをいただいた時、前職の職場が人手不足のタイミングだったので、私も驚きました。でも、やりたいことがあるならその道へ進んだほうがいいからと、送り出してくれました。富士吉田って、つくづく温かいなぁって思います。

宮下織物という、創造の現場で

ー普段はどのようなお仕事をされているのですか?

織物に傷が無いか、調べる「検反」をしています。生機(織機で織ったままの状態)と整理加工後の2回、検反をします。織物は、だいたい1反あたり、30〜40mあるのですが、裏面と表面を2回ずつ確認します。光に透かさないと見えない織り傷、光が当たることで浮かび上がる織り傷があるので、上から光を当てた状態の織物と、下から光を当てて透かした織物を同時に見ながら傷が無いかを確認します。でも、触感じゃないとわからない場合もあるので、手のひらに伝わる感覚で、違和感が無いかも確認します。

ー織物の「傷」って、どんなものを言うのですか?

例えば、経糸と緯糸の目寄りのズレ、他にも上から落ちてきたホコリを一緒に織ってしまう場合など様々で、直せるものは直していきます。織物は鉄の機械で織るため、油やサビによる汚れも発生します。そういった汚れも付いていないかしっかり確認をして行くので、1時間弱で確認が終わる場合もあれば、半日かかる場合もあります。

どうしても直せない場合は、印を付ける場合もありますが、逆に傷がひとつもないと「わぁ!すごい!!」って、嬉しくなります!

反物をしていて異常を感じる場合は、織機を確認するよう工場へフィードバックをすることもあります。私もドビー織機で織物を織っていた経験があるので、傷の様子を見ながら「あぁ…苦戦して織ってくれたんだなぁ…」って思いながら、直したりしていますね。

宮下織物は、もともとブライダルの生地をメインに製織していたこともあり、キズの少ない生地を織ることにかなり気を使っていて、緯糸に糸と糸を結んだ際のコブがなるべく入らないように織っているんです。他にも、ラメ糸を3本撚り合わせた糸を緯糸に使う場合もあって、その3本の糸が綺麗に出れば良いんですけど…そういった織るのも難しい糸を使う場合があるので、検反も入念にチェックをしています。クライアントさんに出荷する最後の確認なので、気を抜けません。

反物や生地を私が出荷することもあるので、梱包も綺麗にするよう心がけています。先染めの産地なので、濃い色の織物が薄い色の織物に色移りしてしまったり、反物を保管している棚の木の色が織物に付いてしまわないように、織物の保護を徹底しています。


ー他にはどのような業務があるのですか?

ヘルプが入ると織物工場で作業をする場合もありますし、直近だとFUJI TEXTILE WEEKのアーティストコラボで富士北麓の自然をプリントしたカットジャカードの展示に携わらせていただく機会もありました。作家さんのイメージを伺いながら、ジャカードをカットしたり、展示方法の検討から施工まで担当しました。美大時代にテキスタイルの展示経験があったので、最終イメージを想像しながら展示させていただきました。

繊細でアーティスティックな宮下織物のテキスタイル

ー宮下織物で作られている織物の好きなところを教えてください!

シャンブレータフタが好きです。タマムシに輝く様子がとても美しくて、先染めならではの平置混色が大好きです。他にも、デザイナーを兼任している社長の珠樹さんがつくる柄には、アーティスティックな魅力があって、釜口に制限がある中で、送りグセのない織物を織るところに技術を感じます。

 

 
ーこれからチャレンジしたいことはありますか?

宮下織物の織物を購入できるオンラインショップのリニューアルを行う予定なのですが、そのサイト構築などを担当する予定です。どのようなイメージービジュアルを入れるとよいか、どの生地をセレクトするかなど、これから社長と一緒に行う予定なので、やったことのない業務は少し不安ですが、楽しみです。

若い世代が動かす産地の空気

ー富士吉田で暮らす魅力を教えてください!

私にとって、富士吉田の暮らしはちょうど良いんです。都会みたいに切迫した空気があるわけでなく、暮らしやすいです。交通の便も良いので、興味があることに手を伸ばしやすい、ちょうど良い距離感があるのが好きです。

それと、路地裏を歩いている時にチラリと見える富士山が好きです。富士山が大好きなおばあちゃんに写真を送ってあげると、とても喜ばれます。散歩しながら、昔ながらの路地裏の喫茶店を見つけるのが大好きで、私のお気に入りは珈琲茶論です。内装や器にもこだわりが感じられて素敵です。

早紀さんが撮影した裏路地から見える富士山

ー産地で働いてみたい人へメッセージをお願いします。

ちょっとでも産地に興味がある方は、是非産地に訪れて、誰かに声をかけてみてください。一歩目は勇気がいるから一番大変だけど、気がつくといろんな人との繋がりができています。そのつながりを大切にしたいと思えたのなら、産地で働く準備はバッチリできていると思います!富士吉田で出会う人って、ふところが深いんです。いろんな人に助けてもらって今のしごとに出会えたからこそ、私も産地の力になりたいなと思うようになりました。

富士吉田の織物産地では、技術を学びながら挑戦できる環境があります。ものづくりに関わる仕事を探している方にとって、一つの選択肢かもしれません。富士吉田で織物に関わる仕事をしてみたい方は、ぜひ一度産地を訪れてみてくださいね。


この記事を書いた人



  • htjrseditor

    「イトとヒトが行き交うマチづくり」をコンセプトに掲げて、山梨県の富士山麓に広がる郡内産地に息づく織物文化を発信しています。

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