2023.01.10

西桂の新しいスポットへ TPM BREWING 寺田哲史さん


山梨ハタオリ産地で活動している素敵な人にインタビュー。今回は、西桂町で地域おこし協力隊を経て、この町に定住した寺田哲史さんにお話を伺いました。

寺田さんは、西桂小学校のすぐそばにあるブルワリーとギャラリー、Spring galleryを営んでいます。人口およそ5,000人というコンパクトな西桂町の、「人と人の距離感がちょうどよくて好き」という寺田さん。

そんなゆるやかなつながりがある地域で、人に開く新しい場所をどう作っているのか。写真、料理、クラフトビール。寺田さんの今までとこれからが繋がった、町での魅力的な活動を覗いてきました。

レストランから写真の世界へ

数々の仕事を経験してきたという寺田さんは、山梨県のお隣である静岡県出身。20代前半で行きついたのは、創作料理レストランでした。そのまま料理の道に…と思っていた頃、料理のメニュー表を撮る仕事を任されたといいます。そのことがきっかけで写真の奥深さや面白さに目覚めたそうです。

写真を本気で勉強したいと思い2006年に入学したのが、八王子にキャンパスがある東京造形大学の写真専攻領域だったそうです。

「東京造形大学の先生は作品としての写真を専門にしてる先生が多くて、僕にそれが合っていたんです。卒業後は助手をしながら作品作りを続けていて、今でも非常勤教員として大学で教えています。」

助手を経て地域おこし協力隊へ。2拠点生活する感覚で行ける西桂町

山梨ハタオリ産地と東京造形大学のテキスタイル専攻は、2009年から現在でも織物事業者と学生とのコラボ事業「フジヤマテキスタイルプロジェクト」が盛んです。こういった関係性もあり、東京造形大学にも回ってきた西桂町地域おこし協力隊の募集情報を見かけたそうです。

「ちょうど助手の任期が終わって、非常勤教員になるタイミングだったんです。一回電車で八王子から西桂町へ行ってみたら、びっくりするくらい近くて!(笑)。協力隊になって地域で活動することを決めました。距離感から言うと『移住する』というより『2拠点生活しながら生活できる町』という印象が強かったですね。」

西桂町は、車だと東京造形大学がある八王子市内から1時間ほどで行けてしまう地域です。こうしたハードルの低さや都内へのアクセスの良さもあり、自然と協力隊に興味を持ったのだとか。

町のカメラマンとして

2016年から西桂町の協力隊になった寺田さんの主な活動は「町のカメラマン」でした。町内のイベントやお祭り、そして町の風景を撮影し、町の誰もが使える写真を『フリー素材』として撮っていたそう。西桂町は大きな富士山と、富士山から湧き出た水が豊富に流れる桂川、そのすぐ側には公園があり、景観がとても素敵な地域です。そして、そんな風景の中には機音が今でも鳴り響いています。

こうした景色や人々の生活まるごと、寺田さんが写真で日々切り取る。そして町を発信する場面で素敵な写真がいつでも使える。なんて素敵なことだろうと思いました。

ギャラリーとカフェスペースが西桂町の新たなスポットに

地域おこし協力隊は、任期3年という短い期間の中で卒業後の活動内容を視野に入れることが重要。

寺田さんは、それまでご自身が育んできた料理や写真の経験を活かした、町の新スポットを作ることを決意。任期中に古い一軒家を借りて改装し、2019年に写真の展示ができるギャラリーとカフェ「spring gallery」をオープンしました。ここでは寺田さんお手製のスパイスカレーが振る舞われ、クラフトビールも飲める場所。集うのは消防のグループ、近所の織物メーカーの方から町役場の方まで。

町の皆の新しい集いの場になりました。

大好きなクラフトビールを、自分でも

こうした中でビール好きが徐々に集まり、皆で語り合いながらお店をやっていく中で、自然と「自分でも作ってみたい」と思い始めたという寺田さん。2019年の秋からは、カフェギャラリーに加えてブルワリーへとこの空間が進化していくのです。

さて、取材を通して見えた寺田さんの印象は、あまり言葉で語らない、静かで穏やかな方。しかし寺田さんのこれまでの人生を聞いていると、写真、クラフトビール造り、そして協力隊になることまで、とても決断のエネルギーがいることばかりでした。

寺田さんご本人はいたってナチュラルですが、「好き」から「その道へ進んでみる」へのとてつもない行動力にとても驚かされました。協力隊はこうした独立心が求められる制度でもあるため、寺田さんのような行動力ある人柄が、この町にとてもマッチしているのだと納得しました。

そんな中で、どんな人生の場面でも「関わる人に影響を受けたり、助けられた」と語ります。それはビールへの挑戦もしかり。

「ビール好きの常連の方の繋がりで、富士吉田で作っているクラフトビール、ふじやまビールのブルワリー見学をさせてもらったりしました。西桂町の皆さんは困ったときに声をかけたらいつも誰かが助けてくれる、そんな優しい人が多いんです。」

こうした回りからの応援もあり、免許の取得や機材の購入など、さまざまなハードルを乗り越えて2022年5月にリリースされたのが、TPM BREWING。西桂町の山『三つ峠』の英語表記から頭文字をとって名づけられました。

ラベルが写真なのが、寺田さんならでは。

富士からゆっくりと濾過された湧水を使用した、軽やかでマイルドなビール。さっぱりとしたIPAから、香ばしい珈琲の香り立つ変わり種ビールまで、4種類全て西桂町の風景とともに美味しいビールが楽しめます。

現在はオンラインストアやイベントでビールが購入が可能!オンラインストアはこちらからチェックしてみてくださいね。

2025年、新しい拠点を三つ峠の登山口エリアに?!

現在のギャラリースペースである古民家は、実は老朽化のため2025年までに解体される予定だそう。現在は移転できる場所を探している真っ最中。

移転先の候補は、クライミングの聖地でもあり富士山の眺めが素晴らしい山、三つ峠の登山口エリア。ここは将来的にアウトドアの魅力を発信する場所へと変化していく構想もあるのだとか。そんな場所にTPM BREWINGも加わるかも?

まだまだ場所はシークレットですが、変わらずこの西桂町で人が集う場を作っていく2025年が、とても楽しみです。

もっと地域に人が増えたらさらに嬉しい

取材の最後、この町で子育てもしている寺田さんが、「西桂町の保育所の手厚いサポートが凄い!」と前のめりに教えてくれました。

「たしか、学童保育が月500円なんですよ。すごいですよね、ありがたいです。子育てがしやすい町だなと思いますし、もっと色々な人がこの町に増えていけばいいなって思います」

お店や子育てを通して、いろいろな角度から西桂を見ている寺田さんから出る町の魅力や良さ。西桂町をもっと深堀したくなる一日でした。

TPM BREWING
https://tpmbrewing.thebase.in/


この記事を書いた人



  • 文 森口 理緒

    富士吉田市の地域おこし協力隊で3年間機屋さんや準備工程の職人さんと繋がり、現在は機屋さんの魅力を伝えたり生地を提案するコーディネーターを目指して活動中!

他のCOLUMN

もっと見る >

こちらもおすすめ

もっと見る >

ハタオリマチの織物でできたノートブック

ハタオリマチの織物でできたノートブック

富士吉田市・西桂町までのアクセス

  • 東京から電車
    富士吉田市へ
    新宿駅-(JR中央本線1時間40分、特急60分)-大月駅-(富士急行線50分)-「富士山駅」「月江寺駅」「下吉田駅」
    西桂町へ
    新宿駅-(JR中央本線1時間40分、特急60分)-大月駅-(富士急行線35分)-「三つ峠駅」

    東京から高速バス
    富士吉田市へ
    バスタ新宿-(中央高速バス【新宿~富士五湖線】1時間45分)-「中央道下吉田バス停」または「富士山駅バス停」
    西桂町へ
    バスタ新宿-(中央高速バス【新宿~富士五湖線】1時間40分)-「中央道西桂バス停」

    東京から車
    富士吉田市へ
    東京-(中央自動車道90分)-河口湖IC
    東京-(東名高速道路90分)-御殿場IC-(国道138号山中湖方面20分)須走IC(東富士五湖道路25分)-富士吉田IC
    西桂町へ
    東京-(中央自動車道80分)-都留IC-国道139号線富士吉田方面20分