突撃取材!織物工場インタビュー

ものづくりを守るために、変化しつづける。富士桜工房

株式会社山崎織物 山崎博之


河口湖のほとりから眺める富士山

雄大な富士山が映える河口湖のほとり。

ここにある「富士大石ハナテラス」は、山梨のものづくりや美味しいものに出会えるお店が点在したショッピングエリアです。今回やってきたのは、このエリア内にある「富士桜工房」。山梨ハタオリ産地の織物商品を買うことができるお店です。

富士大石ハナテラスにある富士桜工房のショップ入口

このショップを運営しているのが、実は西桂町に会社を構える山崎織物。

ネクタイをメインとした生地のメーカーでありながら、自社ブランド「富士桜工房」の運営、そして大石ハナテラスのショップと、多岐にわたる事業を手がけています。取材して見えたのは、常に会社として変化し続ける柔軟な挑戦心と、その一つ一つの事業を徹底している丁寧さでした。

今回はそんな富士桜工房の店主である山崎博之さんにお話を伺います。

富士桜工房店主/山崎織物 山崎博之さん

山梨ネクタイの開拓者?!

先染めネクタイの生産量日本一を誇る、山梨ハタオリ産地。
その中でもネクタイ生地をいち早く始めていたのが山崎織物だそうです。

創業1916年という歴史の中で、時代とともに裏地や傘生地などを手がけていた山崎さん。しかし裏地の生産量が徐々に減少し、生き残りをかけ、1960年ごろに2代目がネクタイの生産を始めました。

当時は八王子へネクタイを納品していたそうですが、それは東京と富士吉田の間に中央高速自動車道ができる前のこと。物流が整備される前から先駆的に新事業に取り組んでいく姿から、山崎さんの「変化力」を垣間見ることができます。

こうした60年前から続くネクタイ生地の受注生産は、現在でも山崎織物の主な事業の1つとして根付いています。

織物開発に熱心な現社長が、生地の幅を広げていく

現代表は、3代目の山崎泰洋さん。クールビズなどでネクタイ産業が打撃を受けたとき、ストール生地や服地などの企画を始めたのが泰洋さんでした。もともと織物開発や実験が好きだったということもあり、複雑な構造の生地を次々と開発し、メゾンブランドからも注文が入るほどに。ネクタイから派生し、服地、インテリア生地、ストール生地など、多岐にわたる要望に応えられる山崎織物の姿は、この時に確立されていくのです。

継ぐ=変化を加える 受け継がれる理念と新たなブランド事業

2代目でネクタイを始め、3代目で生地の幅を広げる。そして現在、4代目の博之さんが主に行っているのが、自社ブランドです。

2011年に山崎博之さんが家業に戻ってきたタイミングで始めました。

「(家に)戻ってくるとしたら、『何か1つ開拓しろ』と言われまして。うちは代々、家業を受け継ぐと何か新しいチャレンジをするんですよね」

「僕たちの世代が比較的得意なのは何だろうと考えたら、やはりデジタルで。そこからオリジナル製品を作ってオンラインで販売し始めました」

こうして同年に生まれたブランドが「富士桜工房」です。2011年はちょうど東日本大震災が起きた年。博之さんが家業に戻ってきたのも、震災という大きな環境の変化があったから。メーカーから販売まで事業を展開していく決断も、こうした背景が後押ししたのかもしれません。

山梨に、日本に根付いたものづくりを 富士桜工房

「富士山や桜は、日本らしい象徴じゃないですか。だから、そういった日本の心とか『らしさ』を忘れないものづくりをしようということで、このブランド名にしたんです」

そんな富士桜工房のお店に入って驚くのは、自社商品のラインナップ数。ちょっとしたお土産に購入できる可愛らしい小物から、高級感のあるシルクのシャツまで、多様な生地を作れる織物メーカーゆえのバリエーションが特徴です。けれど、その多様な商品に必ずちりばめられているのは日本の文化を感じる要素。

小物のモチーフは富士山や桜などがふんだんに使用され、ストールやネクタイはシルクをメインに、日本古来の色を使っています。

ネクタイの生地の余った部分で作られる小物が可愛い

徹底的にリサーチして生まれる商品たち

富士桜工房の代表的な商品「とにかる」。その名の通り、持つと「とにかく軽い!」、小さめのストールです。博之さんがヤマナシハタオリトラベルのポップアップなどで、実際にお客さんと接しながら販売した経験から生まれた商品だそう。豊富な色展開、素材はシルクコットンでふんわりなめらか。そして小さくてたたむとコンパクトにもなり日焼け対策にもなるため、母の日のプレゼントなどにとっても人気だそうです。

お客様の要望をリサーチし生まれたこのスカーフは、今や富士桜工房の定番商品になりました。

その時代に、その人たちが何を求めているのか。確立されたブランドのストーリーと、ニーズへの柔軟な対応力から生まれる商品からは、変化しながらも「ものづくり」がずっと根底にある山崎織物らしさがつまっています。

心遣いがちりばめられた丁寧な販売

2017年、大石ハナテラスのオープンと同時に、富士桜工房のお店もオープンしました。ここでは富士桜工房の商品だけではなく、産地の織物製品を幅広く扱っています。

お店に並ぶ、Tenjin Factoryのリネンクロス

ハタ印のサイトを覗くとわかる通り、ハタオリマチは1つの産地と言っても、会社ごとに織っているテキスタイルも作る商品の雰囲気も多種多様。

「1つの店舗で販売するのは難しそう」
なんて取材する前は思いましたが、お店で商品を見ていると目に入ってくるのが、手書きの商品説明やポップの数々。そして聞こえてくるスタッフとお客さんの楽し気な会話。

リアルな野球ボール!硬球感のある高級なネクタイです

商品のことをきちんと伝えること、来てくれた人との信頼関係を築くこと。博之さんやスタッフの方々の行き届いたケアがあるからこそ、こうした様々な商品を楽しく見ることができるのです。

河口湖へ行ったら、ぜひショップで産地の素敵な商品と出会ってみてください!

メーカーだからできる商品展開を武器にして

大石ハナテラスは、ワンちゃん連れにも優しい施設。愛犬と一緒に河口湖のほとりを楽しんでいる人をよく見かけます。そんな背景から生まれた商品が、犬シリーズ。

「自分の愛犬と同じ犬種の柄がないと、作ってくれって言われて。そうしてるうちにこんなに数が増えました(笑)」

素早い生産が可能なメーカーだからこそできたこの犬シリーズは、生地販売もしています。生地を持ち帰って愛犬グッズを作り、またお店を訪れる。そんな素敵な循環がお店で生まれているそうです。

犬の商品は、これからオープン予定のドッグホテルなどでも販売される予定。

富士桜工房の商品は、こうした施設や県内のホテルなどに広がりつつあります。これからも山崎織物として、富士桜工房として、どんな展開をしていくのかとても楽しみです!

富士桜工房(富士大石ハナテラス店)
場所:〒401-0305 山梨県南都留郡富士河口湖町大石1477-1 富士大石ハナテラスC棟
TEL:0555-72-8788
営業時間: 月〜日10:00-17:00 定休日: 水曜
駐車場:90台

富士桜工房(西桂本店)
場所:〒403-0022 山梨県南都留郡西桂町小沼1697
TEL:0555-25-2010
営業時間:月~金10-18時 要予約(土日祝は状況次第)
駐車場:3台

富士桜工房
https://www.atelier-fujizakura.com/

運営会社:株式会社山崎織物
https://www.yamazaki-fabric.com/index.htm


会社名: 株式会社山崎織物

住所: 山梨県南都留郡西桂町小沼1697

電話: 0555-25-2010

営業日: 平日(土日祝は状況次第)

営業時間: 10-18時

この記事を書いた人



  • 文 森口 理緒

    富士吉田市の地域おこし協力隊で3年間機屋さんや準備工程の職人さんと繋がり、現在は機屋さんの魅力を伝えたり生地を提案するコーディネーターを目指して活動中!

こちらもおすすめ

MOREもっと見る

ハタオリマチの織物でできたノートブック

ハタオリマチの織物でできたノートブック

富士吉田市・西桂町までのアクセス

  • 東京から電車
    富士吉田市へ
    新宿駅-(JR中央本線1時間40分、特急60分)-大月駅-(富士急行線50分)-「富士山駅」「月江寺駅」「下吉田駅」
    西桂町へ
    新宿駅-(JR中央本線1時間40分、特急60分)-大月駅-(富士急行線35分)-「三つ峠駅」

    東京から高速バス
    富士吉田市へ
    バスタ新宿-(中央高速バス【新宿~富士五湖線】1時間45分)-「中央道下吉田バス停」または「富士山駅バス停」
    西桂町へ
    バスタ新宿-(中央高速バス【新宿~富士五湖線】1時間40分)-「中央道西桂バス停」

    東京から車
    富士吉田市へ
    東京-(中央自動車道90分)-河口湖IC
    東京-(東名高速道路90分)-御殿場IC-(国道138号山中湖方面20分)須走IC(東富士五湖道路25分)-富士吉田IC
    西桂町へ
    東京-(中央自動車道80分)-都留IC-国道139号線富士吉田方面20分