自分たちしかできない生地づくりを大切に。オヤマダ
株式会社オヤマダ 小山田 直司さん
シンプルな生地こそ難易度が高い
機屋さんに行くと、そんな言葉をよく聞きます。
プレーンな生地を綺麗に織ること、その生地の風合いに魅力があること。
素材開発をするときに職人さんやデザイナーさんが意識するのは、この二つが大きいのではないでしょうか。
そしてもう一つ
そんな難しい生地が定番商品となり、トラブルなく量産しつづけることは、きっともっと難しい。
自分たちにしかできないシンプルで難しい生地を、長いスパンの量産まで考えて日々研究・開発している工場がこの産地にはあります。
株式会社オヤマダは、ドビー織物を主力とする工場。シルクや和紙を使用したプレーンでミニマルな生地から、表情のあるナイロンなどの化繊生地まで手掛けます。
どの素材の生地も、触ると不思議な違和感と感動が指に伝わってくるものばかり。自然と服などのプロダクトを想像しやすい生地が多い印象です。
今回は株式会社オヤマダの代表、小山田直司さんにお話を伺いました。
会社の転機となった生地は今でも会社の顔に
スーツの裏地を織る機屋さんとして稼働していた、昭和の中ごろ。先代のお父様が卸先の方に「裏地以外にこんな生地できるか」と相談されたことで、服地生産も担うことになります。
その時に受けた相談が、広幅の先染めシルクオーガンジー生地の生産でした。
糸を染めてから織る「先染め」生地は、糸が人の手を介す場面が多い分、糸にトラブルが起きやすいそうです。そんな手間がかかる難しい生地に加え、扱いの難しいシルクを使うことや経糸を均等に見せるための工夫、経糸に複数の色を使うなど、拘りが詰まったオーガンジー生地。
控えめな光沢と軽さ、シャリっとしていてかつ、しっとりもしている風合い。そしてなにより、洋服を作る方にとっては特にありがたい140cm幅の生地ということ。小山田さんが作るシルクオーガンジーは、他ではなかなか見ることができません。
こちらはポリエステルのシャンブレー生地。シャンブレーとは、経糸と緯糸に反対色を使うことで、角度によって見える色が異なるように作られた生地です。
色の移り変わりに目が行きますが、織るときにキズができるとすぐに目視でわかってしまう難しさもあります。高密度で織られている分キズも目立ちやすく、作るのにも覚悟のいるものです。
現在でもこれらの生地はオヤマダの定番商品として定期的に生産されているもの。何十年以上もの間、生産工程が難しい生地を作り続けていることに驚きました。
生産性も担保できるように
さて、ちょっとマニアックな話かもしれませんが。
オヤマダで使用している織機は、長繊維を織る山梨ハタオリ産地ではあまり見ない機械です。経糸を張る部分が短い綿などの生地を量産するために適した仕様で、その機械にシルクやキュプラ、ポリエステルなどの長繊維を経糸に掛けていることはちょっと珍しいことなのです。
繊細な先染め生地を綺麗に織ることと、量を織ること。一見相容れない二つを目指すために、この短繊維用の機械を導入したのだとか。
こういった機械の違いもあって、オヤマダが作る生地の独特な風合いが生まれているのかもしれません。
自由でいることがオヤマダらしい
「親父の代のときに、ある企画の生地を量産する専用の工場にならないか、なんてお話もあって。契約したら工場の経営は安定するんだろうけど、自分たちらしい生地の開発はできないでしょう。それはオヤマダらしくないんじゃないかって、父を説得して止めたんですよ」
悩みながらも、先代が培ってきた生地開発への姿勢や探求心こそがオヤマダらしいと考えている直司さん。現在でも様々な素材を使用した生地の開発を行っています。
あらゆる素材に挑戦することをいとわないオヤマダさんの生地サンプルは、一度見たら好きになる方が多いはず。じっくりと素材開発をしたい方は、ぜひお問い合わせしてみてください。
シルクの耳をふんだんに使ったブランケット
最近では、織物の生産過程で出る生地の端っこ「ミミ」を使用した商品も開発しているそうです。
しっとりとしているシルクのワタは一見重量感がありそうに見えて、実はとても軽い。保温力が高いシルクを身体にスッポリかけられるのはとても贅沢です。
日々シルクを扱う工場だからできるプロダクト。正統派な生地だけではなかなか伝えられなかったシルクの機能的でやわらかい魅力を、この製品を通して伝えています。
会社名: 株式会社オヤマダ
住所: 山梨県富士吉田市松山5-12-5
電話: 0555-24-1511
営業日: 平日
営業時間: 9:00-17:00