東京造形大学デザイン学科テキスタイル専攻の名誉教授 大橋 正芳さんが注目する、全国のテキスタイルをはじめとした展示紹介コラムです。「テキスタイル老師ぶらり旅」略して「テキぶら」どうぞお楽しみください。

2018.12.22

倉敷の手織り①「ノッティング椅子敷」


倉敷の手織りを3つ紹介します。
①は「倉敷本染手織研究所」のノッティングで織られた椅子敷です。


(写真は東京・尾山台の工芸店「手しごと」から)

倉敷本染手織研究所は1953(昭和28)年に外村吉之介(1898-1993)が創設した研究所で、毎年数名の女性を迎え、1年間で機織りの基本を教えてきました。
創設以来300名以上の卒業生を送り出しているそうです。

倉敷美観地区の中心、倉敷民藝館近くにたたずむ研究所。外村家の住居でもありました。

研究所では1年間で植物染料を学び、絹、木綿、ウールなどで着尺、帯などを織りますが、入所して初めて学ぶ織物がノッティング。
研究所でノッティングを織る若い生徒さん。

高さの低い独特の織機はノッティング用に外村が設計したもので、黒と弁柄色に塗り分けられていておしゃれです。
下は織りあがったばかりのノッティング。

(写真は、2018年9月の手仕事フォーラム「全国フォーラム in 倉敷」のイベントで開催された研究所での学習会から)

柳宗悦(1889-1961)など民芸関係の人たちは早くからウインザーチェなどで椅子の生活を好んでいて、
外村が木の椅子のためにノッティングで椅子敷を織りはじめたのではないかと、現在の研究所の方が話していました。
民芸店に今も並んでいて人気の椅子敷は、そう歴史の中で作られ続けています。
ノッティングの椅子敷は、卒業後も織物を続ける卒業生の作るものの中で、今も変わらず一番人気です。

外村吉之介:
・牧師でしたが、柳宗悦に師事して民芸運動に携わり、柳の勧めで織物を始めます。
・静岡の教会時代には、衰退していた葛布の復興に努めます。
・倉敷民藝館を大原孫三郎の援助で創設、初代所長。現在の「倉敷美観地区」の保全に尽力。
大原孫三郎:
・社会的事業の実践や大原美術館を創設した倉敷紡績の大原孫三郎は、柳宗悦の民芸運動を支援。
・戦中に女子挺身隊として倉敷紡績にいた沖縄出身者が、終戦後に帰郷して織物ができるように大原が配慮。
 柳に相談して指導者として倉敷に家族とともに1946(昭和21)年に移住したのが外村でした。
 挺身隊の一人に、芭蕉布の人間国宝平敏子さんがいます。

旧倉敷紡績工場の倉敷アイビースクエ

 

 


この記事を書いた人



  • 大橋正芳

    東京造形大学でテキスタイルデザインを学んで4年+卒業とともに大学に残って46年=50年の造形大人生。リタイアしても「こんなの見てきたよ!」をまだまだ続ける老元教師。日本の手仕事を守り、伝える「手仕事フォーラム」の共同代表。

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