東京造形大学デザイン学科テキスタイル専攻の名誉教授 大橋 正芳さんが注目する、全国のテキスタイルをはじめとした展示紹介コラムです。「テキスタイル老師ぶらり旅」略して「テキぶら」どうぞお楽しみください。

2019.12.18

追伸:トーハクの正倉院


東京国立博物館で開催された「正倉院の世界–皇室がまもり伝えた美–」(2019.10.14-11.24)は終わりましたが、今回は名品が多く展示されていましたので、「ぶらり、トーハク」の追伸として、染織品から名品中の大物を紹介します。

はじめに織物の名品・・・その模造品ですが、8世紀の錦織を龍村美術織物が1991年に復元。その織物で復元された琵琶の袋です。

模造・琵琶袋(正倉院事務所/写真:2008年島根県立古代出雲歴史博物館「よみがえる幻の染色・出雲藍板締めの世界とその系譜」展会場)

正倉院に残された元の織物は、縹色(はなだいろ=青)の地に大きな唐花模様を配した錦織です。画像を載せることは難しいので、宮内庁「正倉院宝物検索」のURLを貼り付けておきます。ご覧ください。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/treasures?id=0000014807&index=7

この琵琶袋の織物は、三枚綾組織の緯錦で、緯糸は9色、柄も大きく、織幅約114㎝の広幅で、この時代の普通の織幅の約2倍。他に類例がないとか。8世紀頃の中国、 当時世界最高の文化を誇った唐で織られたと考えられています。コンピュータはもちろん紋紙もありません。全て人手。紋紙の代わりに人が機の上で綜絖を引っ張る空引機(そらひきばた、堤花機、花機とも)が使われていて、この時代は手間をかけることでほとんどのものを織ることができるようになっていた、そのような気がします。

次に染物の名品。その中でも、“板締め好き”の老師としては見逃せない夾纈(きょうけち)の逸品です。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/treasures?id=0000015695&index=59

「紺夾纈絁几褥」(104×54㎝ 正倉院)・・・紺地に草花や鳥模様の夾纈で染めた絁(あしぎぬ=絹の平織)の几褥(きじょく=儀式の机を飾ったテーブルクロス?らしい)。

夾纈は、板締めの技法の一種で、同じ模様を対象に彫り込んだ2枚の板に布を挟み、締め付け、染料を注ぎ込んで染めた・・・と考えられている染物。正倉院の3種の染色技法(夾纈、纐纈こうけち=絞染、臘纈ろうけち=ロウ染)の中で最も多く残されていて、この夾纈は大きさ、色彩の豊かさで、模様の構成でも群を抜いています。
どうやって染めたのか今も謎多き染物です・・・展覧会場の列に並んで何度もなんども見ました。保存状態が良いので色彩の変化がよくわかります、が、技法は謎のまま。

最後にフェルトの名品。

https://shosoin.kunaicho.go.jp/treasures?id=0000010503&index=26

「花氈 第1号」(275×139㎝ 正倉院)です。花氈 (かせん)は花模様の毛氈(もうせん)・・・大唐花文と呼ばれる模様を幅いっぱいに2つ並べた堂々としたフェルトの敷物。素材の羊毛はカシミヤ系の古い品種の山羊の毛だそうですので、大陸のどこかで作られたものが唐か朝鮮半島を経由して渡来したものなのでしょう。
画像で細部を見てください、白い毛氈の地に青や緑などに染めた毛がていねいに置かれています。まるで模様を筆で描いたかのようです。そしてこの大きなフェルトの敷物を、どうやってフェルティングしたのか・・・人の手はすごい!!

以上。唐がシルクロードを介して世界と繋がっていた時代、日本の奈良時代、おおよそ1300年前の染織品でした。


この記事を書いた人



  • 正芳大橋

    大橋正芳

    東京造形大学でテキスタイルデザインを学んで4年+卒業とともに大学に残って46年=50年の造形大人生。リタイアしても「こんなの見てきたよ!」をまだまだ続ける老元教師。日本の手仕事を守り、伝える「手仕事フォーラム」の共同代表。

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