2018.10.23
若手テキスタイルデザイナーによる合同展示会「NINOW」開催!今季も大盛況でした。
産地の技術を継承し次代を担うテキスタイルデザイナーたちが自ら企画運営するテキスタイルの合同展示会「NINOW ニ・ナウ」が、10月18・19日に代官山のHILLSIDE TERRACE ANNEX-A2・3Fで開催されました!3回目を迎える今シーズンは、尾州・播州・桐生・そして山梨の4産地から6人のデザイナーが参加し、2019-20FWの新作とデザイナーによる新作プレゼンテーションタイムが行われました。年々賑わいが増す展示会「NINOW」の様子をお届けします。
今季のテーマカラーは“黒”
毎回テーマを決めて、各テキスタイルデザイナーが新作をお披露目するNINOW。今季は、メンバーが産地の歴史や所属企業の技術を研究し、再構築する”New Classic”を軸に、各デザイナーが黒の生地を披露しました。プレゼンテーションで生地に込めたイメージや取り入れた技法を知ることができるのがとても面白く、毎シーズンプレゼンは満員御礼です!
メンバーが発表した生地をいくつかご紹介。
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NINOWの発起人で、terihaeruの小島日和さん
「黒と言っておきながら、青の生地になりました笑」と初めから会場を沸かせたのは、NINOWの発起人であるテキスタイルデザイナー、小島日和さんです。小島さんは一宮市内にある機屋でさんでションヘル織機を学びつつ、オリジナルテキスタイルブランドterihaeruの制作、販売をしています。
「星空」をイメージした生地はとてもキュート!
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星空をイメージしたテキスタイル
同じく尾州から参加したのは、葛利毛織工業株式会社で生産を担当している大井理衣さん。
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葛利毛織工業株式会社の大井理衣さん
糸の太さがまちまちになるガラ紡を使って紡績した糸を横糸に織り込むことで、絣のようになる生地を表現したそうです!
遠目だと青の糸がうっすらとしか見えませんが、近くで見ると絣のような糸の具合が一気に存在感を増す、不思議な生地でした。
群馬県の桐生産地にある織物工場、桐生整染商事株式会社から参加している川上由綺さんは、ラメ糸への憧れを投影した生地を制作。
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桐生整染商事株式会社の川上由綺さん
平らなラメ糸はねじれてしまうので整経が難しく、織る技術者も高齢化でどんどん少なくなっているそうです。代わりに分繊糸と言われる化学繊維のフィラメント糸を使うことで、「ラメ糸を使いたい!」という思いを投影させたそう。
そして山梨ハタオリ産地から参加していたのは、槙田商店でテキスタイルデザイナーをしている井上美里さんです。槙田商店は服生地と傘生地を織る機屋さんなので、傘生地特有の高密度な生地を制作したそうです。
高密度で織られていることに加え二重織りの袋織をしているため、厚みと弾力がありました。裏返すと深みのある光沢がかっこいい!
同じ「黒」でも全く表情の違う生地になるんですね!デザインや技法、素材、加工の組み合わせによって無限に異なる生地を作ることができるテキスタイルデザインの魅力を知ることができました。
展示ブースで面白い生地をキャッチしてきました!
6社の各ブースで興味深い生地をたくさん見てきました。こちらは、播州産地(兵庫県西脇市)から出展していた東播染工株式会社 。テキスタイルデザイナーは小野圭耶さんです。
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東播染工株式会社で素材開発をしている小野圭耶さん
小野さんがデザインしたこちらの生地は、ジャパンテキスタイルコンテストで優勝したそうです!無地ライクの生地にシワ加工をするという斬新なデザインが評価されたそう。
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ジャパンテキスタイルコンテストで優勝した生地
コットン100の生地。表裏両方に起毛加工をすることで、まるでカシミヤみたいな肌触りに!「獣毛じゃないんですか?」と聞いてしまったほど、コットンのイメージとは全く異なる風合いでとても感動しました。
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スペックタグもおしゃれ
続いては、同じく播州産地から参加した大城戸織布の穐原真奈さんです。実は大城戸織布にはテキスタイルデザイナーと呼ばれる人はいないそう。各社員が全工程を行う「ザ・機屋」だからこそ、技術で魅せる面白い生地を披露していました!
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大城戸織布の穐原真奈さん
今回の新作披露会で穐原さんが発表した、ジャカード生地の柄はなんと新聞紙!New Classicをもじって「News Crash チック」と命名したそうです。
新聞を何枚も貼り付けスキャンし、生地にしたそうです。
下のとても綺麗な生地は、経糸になんとテグスを使った生地!下に飛び出している糸を触ると、本当にテグスで驚きます。硬いのにしなりがあり、触っていると病みつきになるぷるっとした不思議な生地でした。「こんな生地を探していました!」と虜になるデザイナーもいるのだとか。
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経糸にテグスを使った生地
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経糸にテグスを使った生地
デザインから織りの工程まで全て自分でやるからこそ、ブランドの要望にすぐ答えられるスピード感が大城戸織布に強みだと穐原さんはおっしゃっていました。
プレゼン前後の商談や交流は、従来の展示会と比べてかなり賑わっているような気がしました。生地をデザインした人が展示会の場にいることで、話がよりスムーズに進むだけではなく、「こういう意図でデザインしたんだ!」という話の盛り上がりや納得感の中で商談に繋げていけるのが魅力ではないでしょうか。
「普段産地内にいるとできない意見交換や情熱交換ができ、互いに刺激しあえるのがNINOWの魅力ですね」メンバーである桐生産地の川上さんがおっしゃていた通り、各産地のメンバーが交流し意見を交わしながら展示を行なっている風景を来場者が見ることができるのが新鮮でした。
「次回のNINOWのテーマはなんだろう」と今からとてもワクワクしています!