2026.04.05

奄美大島の大島紬と泥染めを学びに行きました。前編


遡ること2025年の9月、織物工場のみなさんと我々ハタ印運営チームで奄美大島に泥染めと大島紬の研修に行きました。

この事業が立ち上がったのは2024年です。富士吉田市は、甲斐絹や郡内織に代表される織物の産地として長い時間をかけて発展してきた地域です。富士山の伏流水や火山に由来する地質、そして養蚕や製糸といった営みが重なり合いながら、この土地ならではの産業のかたちが育まれてきました。現在も高い織物技術を持つ産地として知られていますが、技術の側面に注目が集まりやすい今だからこそ、あらためて地域の自然環境や歴史、素材との関係性に目を向けてみることが大切なのではないかと感じています。

一方、奄美大島では、自然と深く結びついた染色文化「泥染め」が今もなお受け継がれています。植物から得られる染料と泥田という土地の恵みを生かしたこの技術は、風土そのものがものづくりの一部となっている好例といえるでしょう。自然と向き合いながら生まれる色や質感には、土地の時間の積み重なりが静かに息づいています。

この事業では、奄美大島で泥染めを手がける金井工芸(金井志人さん)と富士吉田の織物産地が出会い、交流する機会を設けました。互いの土地に根ざした素材観やものづくりの視点を共有することで、新たな素材開発のヒントや産地同士の連携の可能性を探ろうとする試みで、2025年7月11日(金)(※8月22日(金)に延期)にはシケンジョ主催のトークセミナー「奄美と富士吉田をつなぐ」が開催されました。

大島紬はコブラン織、ペルシャ絨毯に並んで世界三大織物といわれており、鹿児島県南方にある奄美群島の織物です。絹100%で出来ており、織る前に糸を染める「先染め」を行い、手織りの平織りで、絣合わせをして織上げたものは「本場大島紬」の名で伝統工芸品に指定されています。実は、郡内産地の幻の織物「甲斐絹」が裏地に、奄美大島の大島紬が表地に使われている羽織が多いというご縁もあります。

その先染めの基本となる黒い色をした「泥染め」は、約1300年前から続く伝統技法で、奄美大島に自生するシャリンバイ(島の言葉ではテーチ木)のタンニンと泥の鉄分が反応して黒色を生み出す染色技法です。

染める前の絹糸

まず最初に向かったのは「本場奄美大島紬協同組合」です。大島紬はたくさんの人の手と長い時間をかけて生み出されます。その工程は、大きく分けると30以上の工程があり、半年から一年という長い時間をかけて、一反の織物が完成します。デザインの原画を描く、絣締めをする、テーチ木で染めるなど、それぞれの工程には、その分野に精通した専門の職人がいて、担当する工程を仕上げ、次の工程、次の工程へと渡していきます。織り上がった大島紬の「製品検査」を担うのが、この大島紬協同組合です。

そして、ここでは製品検査だけではなく、実際に織職人が在籍し、大島紬を生み出しています。その工房の様子を見学させていただきました。

これは、絹糸を先染めする前に行う大島紬の要である「絣」模様を「糸繰」しているものです。写真では見づらいですが、大島紬の細かい柄は、絹糸が染められている箇所と染められていない箇所を計算し、染めない箇所は糸で括り染液を染み込ませないという仕組みです。これを柄に合わせてタテ糸とヨコ糸ともに糸で括りあの美しい模様を作り出すのです。これは、写真でも、言葉でも説明が出来ない、なんなら頭でもまだ理解が追いつかない作業であり、私たちは何度も何度も職人さんに説明を受けながら、理解を深めていきました。

これは大島紬の組織図です。この複雑な絵柄を染色された糸をタテとヨコで組み合わせて作るのです。本当に信じられません。

これは糸繰りした糸を泥染めしたあと、括り糸を少しだけ外して見せていただいたもの。5本、10本ずつ束ねて染めるというものの、この細かさ、おわかりいただけますでしょうか…

染めた経糸を織機に設置している様子。ここに染めたヨコ糸を織り込んでいくと模様になります。まだこの段階ではどんな柄になるか素人では想像がつきません。

大島紬の絣模様のモチーフは様々あり、奄美大島の植物や動物、文化を象徴するものが多く、それを知った上で大島紬を鑑賞するのも面白いです。

大島紬は、究極の絣模様で、私たちが想像する絣模様とはまったく別物といっても過言ではありません。糸の染め具合でピクトグラムのような模様を描き、それが1寸の狂いもなく構成され、まったく柄がずれていない精巧な模様を生み出します。本場奄美大島紬協同組合ものが地球印を商標として、その品質を保証しているそうです。改めて大島紬の奥深さと、卓越した技術力を見学し、驚きの連続で参加した皆さんは最後、声を失っていました。理解が及ばず何度質問しても優しく答えていただきました本場奄美大島紬協同組合の皆様改めてありがとうございました。

後半では、いよいよ泥染め体験です。

 


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