「声、出している?」
「声、出している?」
慶應義塾大学4年
イ ヒョンス
あの日、富士山は雲の帽子をかぶっていた。
「毎日、富士山は違う顔を見せてくれるよ。」
高速を走っていた時、私を機織りツアーに誘ってくれた、ゼミの同期はそう言った。
今まで富士山を見たことが一回しかなく、前回見た富士山は、空も晴れていて、とてもきれいだったので、私はきれいな景色への期待に膨らんでいた。
そしてついた、富士吉田。
高速の向こうから顔を出した富士山は、雲の帽子をかぶっていた。
「この前とはまた違う味だなーこの前が派手で明るい女の子っぽいイメージだったら、今回はちょっと暗くて隠れているけど、何かが引っかかる女の子っぽいイメージ?(笑)」
なんか、味が違くって、好きだった。
外国人である私が富士吉田の織物に興味を持つようになったのも、富士吉田のハタヤさんたちが持っている味が違くって、それぞれの味がはっきりしているからだった。
その味は、都会の一律化されたものからは味わえない味だった。
誰かは「クセが強い」と言いそうな味。
でも、誰がどうこう口を出しても、自分が好きならば良くない?自分が好きならば、「強いクセ」は「自分の個性」になると思うし。
富士吉田という町は、その町のハタヤさんは、世の中に向けて「自分」の声を上げている町だった。
そのようなハタヤの中、私が純粋に「好き」と思った、自分と似ていると思ったハタヤが2軒あった。
田辺織物、羽田忠織物。
田辺織物は、色の組合と質感の違いを利用した自己表現が特徴的であった。
主な品物は座布団カバー、クッションカバー、名刺入れやクラッチバッグ(ノートパソコンカバン)など。
その中で犬柄のクッションカバーと黒いクラッチバッグは見た瞬間、思わず「これほしい!」と言ってしまったほど(笑)私の好みだった。
金色と紺色が調和されていて上品な犬柄のクッションは、どこかのギャラリーにありそうなデザインで、抱きしめたときの感じがちょうどよく、いつまでも寝転がることができそうだった。
クラッチバッグ(ノートパソコンカバン)は機織りだからこそ出せる上品かつ派手な黒色がとても印象的でワンポイントアイテムとして完璧な一品だった。(ただ、クラッチバッグは13インチであるが、私のノートパソコンが14インチであるためノートパソコンが入らないという短所があった。(苦笑)ノートパソコン、買え変えようかな(笑))
上品、かつ、派手。
田辺織物は、私の記憶にこのように覚えられている。
一方、羽田忠織物から私が感じた事を一言で表現すると、フォーマルでスマート、なのに、派手だった。
羽田忠織物の主な商品はネクタイとボータイで、リネンとシルクのラインアップがあり、どっちも素材の質感を生かしたちょうど良い派手さが本当に印象深かった。
お金さえあれば、「ここから、ここまで、全部ください。」と言いたかった。(結構ガチで(笑))
私は富士吉田で、誰もが自分の純粋な好きを見つけられるとは思わない。
でも、富士吉田は、あの町のハタヤさんは、世の中で立ち向かって自分の声を上げている人にとって魅力的な町に違いないと思う。
なぜなら、今まで富士吉田ほど、世の中の主流に立ち向かって、自分の声を上げている町を私は見た事がないから。
あの町には、「クセの強い」数多くのハタヤさんたちが、必死に世の中に立ち向かって、「自分の声」を上げているから。
毎日、違う顔を見せてくれる富士山のように、富士吉田も、みんながみんな自分の声を、個性を出しているから。
だから私は、富士山と富士吉田がこれから見せてくれる味を、とても楽しみにしている。