産地を支える力 オリコウさんをご紹介

150年の歴史を支える槙田商店の女性デザイナー達

槙田商店 田村 知恵巳さん、井上 美里さん


ハタオリマチも、梅雨の終わりへと向かいはじめ、夏本番を迎えようとしている今日この頃。 雨の日や、照りつけるような日差しの暑い日は、傘アイテムを持ち歩く絶好のチャンス!おしゃれな傘を持ち歩ける日を楽しみにしている、渡邉麗です。

今回は、創業1866年、素敵な傘を作り続けている槙田商店の田村知恵巳さんと井上美里さんからお話を伺いました。

職人一人一人の工程から作り出される槙田商店の傘たち

江戸末期から150年の歴史を持つ槙田商店。もともとは生地の買い付け業だったそうですが、昭和30年頃から傘生地の製造へと切り替えていったそうです。

その長い歴史がある「傘づくりの技術」を見学させていただきました。まずは、生地を裁断するところから紹介させていただきます。

正確で無駄のない裁断

傘は『小間(コマ)』と呼ばれる三角形の生地を複数縫い合わせて作っているそうです。コマを裁断するための木型は傘の骨の数やサイズ、生地の伸縮性などによって使い分けているためたくさんあります。

生地の無駄がでないよう三角形を互い違いにし、丁寧に手作業で裁断していきます

この木型を使って裁断された三角形の生地を『コマ』と呼ぶそうです

キズひとつ見逃さない透見(すきみ)

裁断されたコマに、織りキズや汚れなどが無いか、下から光を当てて透かして1枚1枚検品します。また上からも光を当て表と裏を同様に検品します。傘は広げて使用した際に、外側からも内側からも人の目に触れるため、念入りに検品するそうです。はじかれてしまったコマは、後で他の付属として再利用されます。

コマを縫い合わせる中縫い(なかぬい)

通常のミシンでは上糸と下糸がありますが、上糸のみの特殊なミシンを使ってコマを縫い合わせていきます。上糸のみのミシンを使うことで、縫い目に伸縮性がでるため、傘を開いた際に美しいシルエットが表れるそうです。他にもミシンがあり、用途によって部分的に使い分けもされていました。

上糸のみのミシンを使うことで、伸縮性がでるため、傘を開いた際により美しく見えます

傘の種類によって骨の本数が異なるため、生地をつなぎ合わせる枚数もさまざま。この後に縫い合わせた生地に露先と言うパーツを縫い付けていく口とじと言う行程があります。色々な付属を傘の骨に取り付けながら骨にカバーを張っていきます。

傘の種類によって骨の本数が異なるため、生地をつなぎ合わせる枚数もさまざま。この後に縫い合わせた生地に露先と言うパーツを縫い付けていく口とじと言う行程があります。色々な付属を傘の骨に取り付けながら骨にカバーを張っていきます。

傘にとって重要なパーツである露先を縫い付けます

1ヶ所1ヶ所丁寧に中綴じ(なかとじ)

ミシンで縫い合わせた生地と傘の骨とを一体化させるために、1カ所ずつ丁寧に縫い付けます。

蝋引きされた糸を2重にして撚り(より)を加えてあるため、撥水性もあり強度もあります

縫い糸は蝋引きされた糸を2本取りにして撚り(より)をかけたものを使います。蝋引きされていることで撥水性もあり撚りで強度もでます。

最後のひと手間のアイロン

傘の内側から1コマずつ丁寧にアイロンをかけ、シワを取り除き、傘を開いたときのかたちを整えます。このアイロンがけの作業の際も、生地にキズや汚れがないかを念入りに確認するそうです。

最終段階として、菊座(キクザ)と呼ばれる付属と、陣笠(ジンガサ)と呼ばれる円錐形の金具を傘の先端に取り付け、最後に手元をつけて完成です。菊座や傘をとめるためのバンド、その他の付属が透見の際にはじかれたキズコマの生地で作られているそうです。



この一連の流れ、ご覧いただいてお気づきでしょうか? これらの工程、すべて手作業で施されているのです!まさしく職人技!槙田商店従業員一人一人の持つ技術力の高さを目の当たりにしました。

そして、さらに!槙田商店にはデザインを担当する部署もあるのです。

槙田商店の女性デザインチーム

槙田商店のデザインチームは5人。今回お話をお伺いしたのは、田村知恵巳さん、井上美里さんです。

ハタヤさんは作る機能であって、このハタオリマチにも作る機能が備わっていますが、アイデアをビジュアル化するデザイナーがいてデザインする部署があるハタヤさんって、めずらしいそうなんです!槙田商店さんが、デザイナーを採用したきっかけは何だったのでしょう?

田村さん「私はどちらかというと、デザイナーというよりも職人という意識でした。会社が新しいものが好きで、当時チェックや柄を作るコンピューターを導入して、そのオペレーターとして入ったのがきっかけです」

田村さんは、もともと美術の学校を出ているそうですが、織物やテキスタイルの知識は無かったそうです。ものづくりに携われることが、槙田商店へ入るきっかけとなったそうです。

では、井上さんが槙田商店に入ったきっかけはなんだったのでしょうか?

井上さん「学生の時に富士山テキスタイルプロジェクトで、槙田商店の商品開発に関わっていました。そのプロジェクトが槙田商店へ就職することになったきっかけです」富士山テキスタイルプロジェクト…?なにやら楽しそうな企画ですね。

そもそも、富士山テキスタイルプロジェクトとは?

東京造形大学テキスタイルデザイン専攻の大学院生が、ハタヤさんと共同作業で製品を作るプロジェクトです。このプロジェクトをきっかけにファクトリーブランドが産まれるなど、産地にとっても注目の企画になっています。このプロジェクトをきっかけに、井上さんは「菜 –sai-」という野菜をモチーフにした日傘をデザインし、槙田商店で商品化までやり遂げました。伸び縮みする生地で、今までにない日傘を作り上げたそうです。こちらが、その日傘です。

『菜 –sai- にんじん』

生地を触ってみると生地自体に伸縮性があり、傘を閉じた状態もかわいらしい。

 

詳しくお話を伺うと、デザインチームの井上さんを除くメンバーは、全員ハタオリマチ出身者。それまで、地元出身者を採っていた槙田商店にとって、井上さんはどのような存在だったのでしょう?

田村さん「実は、造形大とのコラボがきっかけで井上は槙田商店に就職することになったけど、コラボするときの条件で『就職できる人』と大学の教授にハッキリ言ってたんです」

井上さん「私も若干そのお話は耳にしていたんですけど、教授からは『そこまで考えなくていいから』と言われていました」

これは、結果オーライということでしょうか?笑

田村さん「もちろん、彼女の人生もあるし、私たちもそう無理やり彼女を引きずりこもうとは思っていませんでした。ただ、働く環境はしっかり整えていることを見せつつも、ちゃんと就職については考えてほしいと伝えていました。決断するのは井上だし、決断してもらわないと、と思っていました」

井上さん「プロジェクトの在学期間中に槙田商店へ通う中で、デザインチームの中で育休をとっている人や働きながら子育てをしている人がいることを知りました。そんな環境を入社前に見ることができたので良かったです」と、井上さんは笑顔で話してくれました。

奥の深い仕事。人を採るのは、未来への投資。

「やはり職人として、仕事は続けて働いてもらえるのが理想です。この仕事って、織り組織や密度の関係で全然違う織物になっていく。方程式があるようでなかったり、本当奥が深い。でも、それらの知識を覚えて『じゃぁ辞めます』って言われたら悲しいじゃん!」と田村さんから、本音がポロリ。

女性は、結婚や子育でキャリアが途中で切れてしまうことが多いのが現状。女性が子供を育てることで、キャリアが途切れてしまうのはちょっと寂しいですよね。どんな会社にも、うまく続けられる環境を整えることは、これからの世の中にはとても大事なことだと思います。特に、仕事をすることが女性にも求められている時代だからこそなおさらですよね。そういう意味では、槙田商店はこれからの未来を切り開いていると感じました。

井上さんは就職して3年ですが、どんな仕事を任されているのですか?

井上さん「学生時代は、面白いテキスタイルを使っているファッションブランドのショップを見て回ったこともありました。今こうやって間近で作ることに関われていて、私たちが憧れている人の服をつくっているんだという意識が強いです」と、井上さん。実は、ミラノで開催された服地の展示会に、会社代表として大抜擢を受けて行くことがあったり、学生の頃から興味のあったファッションブランドのテキスタイルづくりの仕事にも関わることができているそうです。

井上さん「デザインというと机上で繰り広げられると思いがちだけど、この産地では違います。ものづくりのハジメから実際に一枚の布として形になるまでを目の当たりにできるのは、このハタオリ産地だからこそかもしれません」と、ハタオリマチへの魅力も教えてくれました。

北欧の巨匠とのコラボレーション傘も誕生!

井上さん「実は、スウェーデンのプロダクトデザイナーStig Lindberg(スティグ・リンドベリ)とコラボレーションした傘のデータ作成に携わりました」

なんと!あのリサラーソンの師匠とのコラボレーション!!すごいですね。1947年に初めてリンドベリが手がけたテキスタイルデザイン「POTTERY(ポテリー)」「HERBARIUM(ハーバリウム)」、 1956年の「FRUKTLADA(フルクトラーダ)」、初期の作品である手書きの絵柄をデジタル化した「DRAPES(ドレイプス)」の4柄。各柄3色展開で、それぞれ長傘と折りたたみ傘の2種類があるそうです。

左「POTTERY(ポテリー)」右「FRUKTLADA(フルクトラーダ)」

左「DRAPES(ドレイプス)」右「HERBARIUM(ハーバリウム)」

井上さん「中でも『POTTERY(ポテリー)』は特に元々のプリント生地の様に綺麗に柄を表現するのに苦労しました。『POTTERY(ポテリー)』は1つ1つに細かい柄のある花瓶などが並んでいる柄なのですが、その花瓶の柄を表現するのに苦労しました。デザインソフトを使用して一気に出来る場合もあるのですが、それではきれいな曲線、細かい描写が表現できなかったので、1箇所ずつ手作業で修正をしました。その成果もあり、きれいに組織が表現ができたと満足しております。ぜひジャガード織による、糸で柄を表現した生地にも注目していただきたいです」

井上さんの熱意を感じる仕事っぷり!素晴らしいデザイナー魂を感じました。

今回の取材を通して、職人の技や思い、未来を見据えての人材確保など、仕事に対する奥深さを感じました。時の流れを先読みし、そこに投資できる企業の強さも、より良い製品を作っていく上で大切なのかもしれません。槙田商店の田村さん、井上さん、貴重なお話をありがとうございました!


会社名:槙田商店

住所:〒403-0022 山梨県南都留郡西桂町小沼1717

電話:0555-25-3111

営業日:月~金 9:00~18:00 第3土曜日10:00~16:00

ロットと金額:要相談
工場見学:可(要予約)
インターン:可

この記事を書いた人



  • 渡辺麗

    Rei watanabe

    生まれも育ちも富士吉田。このまちのファンを増やすために、まずは自分がこのまちをフィールドに楽しんでいます!


  • 寺田哲史

    写真 寺田哲史

    1982年静岡市生まれ。東京造形大学デザイン学科写真専攻卒業。同大学非常勤講師。2016年より西桂町地域おこし協力隊。

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