突撃取材!織物工場インタビュー

「どう作ればいいかわからない織物」が、いちばん面白い。滝口織物

滝口織物 滝口昭一さん


1000年以上続く織物の街として発展してきた郡内産地で、マフラーやストールを専門に織る滝口織物。織物工場は山梨県西桂町に位置し、産地内で「ウール使いの魔術師」と呼ばれる三代目の滝口昭一さんは、ファッションデザイナーやブランドから絶大な信頼を受けています。今回は、織られる生地の表情からストールの仕上がりまでがイメージできるという滝口さんの魅力をお届けします。

水とともに始まった、滝口織物のものづくり

— 滝口織物について教えていただけますか?
滝口さん:私の祖父が1958年に“滝口織物”を始めました。西桂町は富士山の湧水が豊富にあるので、その水を使って水車を回して織機を動かしていたと聞いています。当時は羽織の裏地や着物地を中心に、染色までを自社で行っていたそうです。現在は織機も機械になっていて、先染めのウールなどのマフラーやストールなどを作っています。

— 水と織物の関係は、郡内産地のものづくりの根幹にありますよね。
滝口さん:そうだね、先染めの糸を使う上で、染色にもたくさんの水を使うから、まさに水があってこそできるものづくりが織物なんじゃないですかね。西桂町や富士吉田市には、染色屋、整経屋、整理加工場、シケンジョ(富士技術支援センター)、まで、なんでも身近にあるから、ちょっと堅牢度を調べたいな、縮絨後の風合いを見てみたいな、そんな時に、すぐ相談に行けたり、実物を見て判断できることで、ものづくりの精度が高まります。

バイオーダーのものづくり

滝口さんの作るマフラーやストールの多くはバイオーダー。効率化のためにタテ糸を共通化する工場も多い中、チェック柄や特殊組織を取り入れた、オリジナリティ重視のものづくりを行っています。デザイナーのイメージを受け取り、糸選びや配色、テンションを調整しながら布を設計。指示通りに作るだけでなく、別案を提案し、より良い一枚を一緒に選び取っていく過程も、この仕事の醍醐味です。

— デザイナーさんからはどのような指示書が来るのですか?
滝口さん:デザイン画が来ることもあるけれど、イメージだけがLINEで届いて「こんな感じで作りたい」って言われることも多いですね。そのイメージを織物で表現するには、どんな糸を使うか、タテ糸をどんな縞組みにするか、ヨコ糸をどんな入れ方にしたらそのイメージに近づけるか、色々と試行錯誤しながら設計図を起こして、まずはサンプルを織ってみるかな。実際に織ってみて “なんか違うな” って思ったら、縮絨した後の風合いを見越して別案を作ってみる。お客さんの指示通りに作るだけじゃなくて、こっちの方がカッコイイなぁと思ったら、それも作ってみて提案すると、だいたい「こっちのサンプルのほうがカッコいいよね」って選んでもらえることが多いかな(笑)

 

織りと仕上げで、風合いは変わる

— ところで、ストール・マフラー・ブランケットの違いって何ですか?
滝口さん:特に明確な定義はないけれど、生地幅が狭ければ“マフラー”、広ければ“ストールやブランケット”って呼ぶことが多いですかね。うちでは、生地幅120cm・長さ200cmくらいのものをストールやブランケットって呼んでいますね。厚さや風合いも基準になりますかね。薄手ならストール、厚手ならブランケット、といった感じですね。

— 風合いや厚みはどう作り分けるのですか?

滝口さん:梳毛(そもう)・絨毛(じゅうもう)などの糸の種類とか、メリノウールやカシミヤなどの素材、それから組織、縮絨や起毛などの後加工で大きく変わります。織物の組織と縮絨次第では、生地が半分のサイズまで縮むこともあります。今は“織りあがり” を見ただけで、どれくらい縮絨するかをイメージできるようになったかな。量産でリピートが来たときに失敗できないから、なるべく安定した毛糸を使うよう心がけています。

タテ糸をつなぐ「撚り付け」も、自分たちで行っています。外注するよりも自分で繋げたほうが速いしね。でも、撚り房は外注ですね。

—撚り房ってどんなお仕事ですか…?
滝口さん:え?知らない?じゃ近いから撚り房屋さんに行ってみよっか。

房の先まで手を抜かない

— こんにちは!突然すみません。撚り房ってどんな作業なのか教えていただけますか?
前田さん:マフラーとかストールの端に付いているフサフサ見たことあるでしょ?あれが撚り房だよ。織り上がった生地って、生地と生地の間に、織っていないタテ糸だけのところがあるんだよ。そのタテ糸を機械にかけてから2本に分けて、S撚りとZ撚りを重ねて、整理加工をすると形が定着されるんだ。撚り房はあるとないとじゃ違うでしょ。

昭和50年代には年間100〜200万枚のストールが作られていたからね。整理加工工場で、自分の織物を探すのも一苦労だったよ。昔はうちでも織物を織っていたんだ。これなんかは濡れ巻きだね。

— 濡れ巻き整経ですか!?幻の織物じゃないですか!!
前田さん:そうか。昔はここいらじゃこういう織物を織って、傘にしたりしたもんだよ。

濡れ巻き整経とは、山梨県だけに伝わる幻の整経技術です。整経とは、タテ糸の必要な本数・長さ・張力などをそろえる作業のことをいいますが、濡れ巻き整経とは濡れたままの極細のシルクを全て職人さんの手作業で引き揃えていきます。ことで独特の光沢感が生まれ「鏡の様なサテン」と愛されてきました。そんなお宝に出会えるのも、産地ならでは!もっと詳しく知りたい方は、シケンジョテキでご覧ください。

「変なものを作りたい」から、未来が生まれる

— 滝口さんが好きなものづくりってなんですか?
滝口さん:やっぱり、「どう作ればいいかわからないようなもの」のほうが面白いですね。普通のことをしていたら、普通なものしかできないけど、パリコレに出展するブランドさんとかは凄いイメージの画像を持ってくるんですよ。その表情を、どうしたら作れるかなって考えるのがすごく楽しいから、難しい相談や前例のない依頼ほど面白いなぁって感じますね。

西桂には、そういう他ではやらなさそうな個性的な織物を作る機屋さんが多いから、一緒に展示会に出るのも楽しいですよ!

理想のイメージを試しながら形にしたいなら、滝口昭一さんほど心強い存在はいません。
実験を重ねる探究心と、この土地で培われた技術が、滝口織物らしい新しい布を織り続けています。


会社名: 滝口織物

住所: 山梨県南都留郡西桂町小沼1775

電話: 0555-25-2201

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