産地を支える力 オリコウさんをご紹介

高級織物産地の品質を繊維から支える舟久保撚糸

舟久保撚糸 舟久保孝さん 舟久保俊一さん


こんにちは!ハタオリマチの富士吉田市出身の渡邊です。
匠の技がひっそり眠るこのマチの技術が、いろんな人に知れ渡って、山梨ハタオリ産地の技術を使ってもらえるようになったら嬉しいと思う今日このごろです。

山梨ハタオリ産地はここからはじまる

さてさて、私たちが着ている服はたくさん糸が織り込まれてつくられています。でも、その糸がどうやって作られているか知っていますか?
ハタヤさんが織る糸を用意するために、たくさんの工程があります。その中でも今回は、なかなか知られていない「撚糸(ねんし)」という作業をご紹介しましょう!

素材メーカーから「原糸」と呼ばれる蜘蛛の糸のような糸を仕入れるのですが、実はそのままだと細すぎてまったく使えないらしいのです!だから、私たちが目にする糸は、原糸を何本か撚り合わせてできています。
この撚糸という作業、ごく最初の工程にあるので、知っているひとは少ないのではないでしょうか。単純なようで奥が深い、「これを知っていたらテキスタイル・マニアだ!」といわんばかりの重要な作業です。

ハタオリマチの糸職人、舟久保撚糸!

お話を伺ったのは、舟久保撚糸の舟久保 孝さん、俊一さん。平成19年に工場を建て、ハタオリマチに撚糸をした糸を供給しています。主に、裏地や袖裏のために使われています。
現在扱っている繊維は、裏地用のコットン原糸だけなのですが、昔はレーヨンやもっと太い原糸も扱っていたそうです。

工場の中にはボビンに巻かれた糸たちが規則正しくずらーっと列をなしていて、「シュビビビビビビ」と何かが回転している音が絶えず流れていました。これぞ工場!という感じでワクワクしますねー!

最若手の撚糸屋さん

ハタオリマチで撚糸業を営んでいるのはなんと12件だけだそうです。どのくらいの年齢の方がやっているのか訊いてみると、70歳、75歳、80歳——
舟久保さんは60歳すぎですから、驚くことに最年少の撚糸職人だったのです!「一番の若手ということになるね」と笑って話していただきました。

撚糸(ねんし)とはどんな作業?

ぐるぐる糸をねじり合わせる

「撚糸(ねんし)」とは簡単にいうと、糸と糸を撚(よ)り合わせる作業のことです。原糸という細い1本の糸があるのですが、そのまま使うともろくてすぐに切れてしまいます。
だから、2本の原糸をねじり合わせたり(双糸)、1本の原糸をひねり上げる(単糸)ことで、糸の強度を上げるのだそうです。

舟久保撚糸さんでは、1本の原糸で撚り上げる「単糸」をおこなっています。

糸の強度と風合いを左右する

撚糸をすると、ただ強度が上がるだけでなくて、独特の風合いがでるんですよ。甘く撚ればソフトに、強く撚ればドライに仕上がります。
右側が撚糸をする前、左側が撚糸をした後です。

撚糸の作業をさぐる

分ける

素材メーカーから仕入れた原糸を小分けます。撚糸を掛ける機械にセットできるボビンに巻き付けるのですが、1ボビンに310gの原糸を分けるそうです。分けるだけでも、なんと9時間もかかります。

工場の入り口には仕入れた原糸の箱が何十個も積んでありました。1箱に30kg入っているそうなんですが、全部伸ばしたらどのくらいの長さになるのか想像できませんね!

分けている最中に、糸が切れてしまうこともあります。そんなときは職工さんの匠の技の出番です。
ダメになっている部分を切ってしまって、糸を結び直します。しかし、ここで大きな結び目をつくってしまうと、後の工程にどんどん響いてしまいます。

だから、こんな風に結び目が小さくなる特別な結び方をするそうです!

撚る

いよいよ撚糸の作業です!小分けにした原糸を機械にセットします。

ズラーっと並んでいる機械は、ベルトコンベアのような1本の帯で、全部のボビンをぐるぐると回転させています。

2本の糸で撚るのは何となく想像できるのですが、1本だけで撚るのは全くイメージつきませんでした。どうやっているのかというと…

この手前下方でグネグネしている「ワラビ」という鉄の棒に原糸をくくり付けます。

そしてボビンを回転させることで、糸がネジネジと捻り上げられて、撚り付けができます。

この撚糸の作業にかかる時間は、驚きの3日間!気の遠くなるような作業ですね。一度かけたらかけっぱなしだそうです。

蒸す

ここで私が一番驚いたのですが、糸を撚ったあとに蒸すんです!何故蒸すのかというと、撚った糸は回転が掛かっていて、ぐるぐると捻じれてしまい使い物になりません。

そこで、蒸してあげることで、撚ったあとの形状をそのままに、糸をピンと伸ばすことができるようになるのです。
舟久保撚糸さんの窯では、70℃で1時間半蒸します。このひと手間が大事なんですね。

原糸の完成!

撚った糸を円筒形に巻いたものを「原糸」と呼ぶそうです。この形にできたら完成です!

さらに詳しく知りたい方はこちら!「シケンジョテキ『撚糸のひみつ』」

http://shikenjyo.blogspot.jp/2015_07_01_archive.html

仕事への工夫とこだわり

「ダメな糸は全部捨ててしまうんだよ」

この撚糸という作業は、一連の織物づくりの工程の中で、最も上流にある作業。ここで品質を下げてしまうと、どんどん後の織工さんにシワ寄せがいってしまいます。

ほんの小さな傷があるだけで、ボビン1つを丸ごと捨ててしまうのだそう。傷モノのボビンを見せてもいただいたのですが、ほんの「粉」みたいな感じで、カメラには写しきれませんでした!

傷モノの見分け方を訊いてみたら、「やってる最中に目を光らせるしかないね」と笑いながら答えてくれました。ものすごーく細い糸が何十本も高速で動いている中で見つけ出すのは、まさに撚糸職人の技といえますね!

歯車を合わせて計算!

1つのボビンは310g巻かれており、何百mもあるのだそうです。これを機械にかけると3日ほどかかるのですが、適当にかけると真夜中にできあがったりして、バラバラなタイミングで作業を行わなければなりません。

そこで、撚糸の回転を計算して、一気に取り換えの作業ができるように時間を調節するのだそうです。どうやって回転を調整しているかをご説明しますと…

使うのはなんと「歯車」!歯車の組み合わせでボビンが回転する速度を変えます。「ギア比」といって、それぞれの歯車の回転の比率を計算するみたいですよ。
それぞれの歯車をよく見てみると、52とか57とかの数字が書いてあるのが見えます。この数字を組み合わせて、ボビンの回転をコントロールします。

ストロボ・ライトでアニメーション!?

「回転数が合ってるかどうか確認するためにストロボを使うんだよ」と舟久保さん。ストロボといえば、激しく点滅するフラッシュライトみたいなものですよね。
どういうことだろう、と思っていると懐中電灯みたいなモノを取り出してきました。何が起きるんだ!と見守っていると…

ライトがパパパパパパッとものすごい速さで点滅し始めました!少しみていると、回転している糸がだんだん見えてきましたよ!
糸が目に見えない速度で回っているから、コマ送りのアニメーションみたいにして、回っている糸を観察するんだとか。
糸の回転とストロボの発光周期が合わさると、なんと止まって見えるのです!このときの数値(ヘルツ)を見て、回転数を確認します。

山梨ハタオリ産地での撚糸に対する想い

「撚糸っていうものはそんなに特殊なものをやってる訳じゃないけどねえ」と舟久保さん。ハタヤさんが織りたい素材を撚糸するのが仕事です。

ハタオリマチの撚糸屋さんはほとんどが地場に卸していて、こんな上流の工程からハタオリマチで担われているのは、驚きでした。

舟久保さんにこれからの展望を訊いたところ。「シートベルトに使われるポリエステルなど、強い糸も機械を変えればできるけれども、自分で新しいものを開拓するのはなかなか難しいなあ。」
もっといろいろな素材で織ってもらえば、撚糸屋も挑戦できる、と未来を見つめていました。
ハタオリの仕事は、最初から最後までつながっている連携プレー。ともにいいものをつくり、挑戦してきたからこそ、世界に誇れる織物へと登り詰めたのでしょうね。

さてさて、撚糸の世界はいかがでしたか?今回は山梨ハタオリ産地のはじまりをお伝えしました。
ここからたっくさんの織工さんの技が吹きこまれて、やっと皆さんの目に入る製品へとなります。
一緒に、山梨ハタオリ産地の魅力を探っていきましょう!


会社名:舟久保撚糸

住所:〒403-0002 山梨県富士吉田市小明見536

工場見学:可

この記事を書いた人



  • 渡邊敦孔

    文 渡邊敦孔

    富士吉田出身の『ハタヤの孫』。卒業論文を山梨ハタオリ産地で書くうちにテキスタイルにハマる。うどんのコシは強めが好みです。


  • 寺田哲史

    写真 寺田哲史

    1982年静岡市生まれ。東京造形大学デザイン学科写真専攻卒業。同大学非常勤講師。2016年より西桂町地域おこし協力隊。

こちらもおすすめ

もっと見る >
もっと見る >

#ハタ印に参加しよう

運営 ハタオリマチのハタ印プロジェクト(事務局:富士吉田市産業観光部商工振興課)
住所 山梨県富士吉田市下吉田6-1-1 電話 0555-22-1111(代表)