富士山の麓に広がる山梨県富士吉田・西桂通称「ハタオリマチ」は、1000年位上続く技術力の高さが世界的に認められている織物産地です。ところが昨今、織物の技術継承が途絶えてしまいかねない危機的状況にあります。何十世代も前の祖先が脈々と繋げてくれた、このマチをより良い形で次の世代に繋ぐため、私達はマチ全体で新たな挑戦に取組み、その意思の印として「ハタ印」をかかげています。そんな、ハタオリマチの「今」に心を打たれた人々が綴る、ハタ便(ダヨリ)をお届けします。

2018.07.18

山梨ハタオリ産地「裏地」を支える伴繊維の撚糸


江戸時代、奢侈禁止令で贅沢を禁止された江戸っ子は、豪華絢爛な着物の裏地で「粋」を競っていました。その江戸のおしゃれを支えてたのが、山梨ハタオリ産地。今でも細い糸で細かい織柄を表現できる高級織物産地として、高級スーツなどの裏地などを織っています。そんな裏地を支えているのが、ベンベルグ糸です。

ベンベルグとは、コットンの種についたうぶ毛を集めて、再生繊維として生まれ変わらせたキュプラ糸の商標です。ベンベルグは、天然由来のため環境に優しく、夏は涼しく冬は暖かく着られます。静電気が起きにくいのも嬉しいところ。また、天然繊維のような太さにムラがなく、糸の断面もきれいな正円をしているので、摩擦が少なく、軽くて光沢があります。まさに、裏地にぴったりの糸なんです!

ベンベルグの原糸

山梨ハタオリ産地で生産されている先染めの糸は、原糸を染めてから織るのですが、ベンベルグの原糸はとっても細く、そのままでは綜絖(そうこう)にひっかかってしまいます。そこで、糸の強度を上げるために糸を撚(よ)る「撚糸(ねんし)」の工程が必要になります。
今回は、ベンベルグの糸を山梨ハタオリ産地に向けて撚る撚糸屋さんである伴繊維の伴実悟さんにお話を伺いました!

伴繊維の伴実悟さん

伴さんの工場では、数本の原糸を2束に引き合わせ、ロープのように撚っていくそうです。くるくると下の原糸が合わさり、上のボビンへ巻き取られていきます。ベンベルグの糸はとても繊細なため、伴さんは原糸に傷がついていないか、常に点検や調整を行なっているそうです。

撚糸をする機械。下の原糸2本が高速で回転し、上のボビンへ巻き取られていきます。

目視でも見失ってしまいそうなほど細い糸です

伴さんの工場では、ボビンに巻き取られた糸を染められるように、ドーナツ状のような綛(かせ)の状態に巻いていきます。

綛上げ用の機械。

とても細い糸のため、糸が切れてしまうこともしばしば。切れてしまった場合、なんと人の手で結んでいきます!とっても細い糸なのに、素早く結んでいく職人さん。

とっても細い糸を手だけで素早く結んでいきます。

そして綛の状態になった糸の束が、こちら。まるでシルクのような、ツヤツヤとした糸です。持つとプルップルしています!このツルッとした滑りの良さが、ベンベルグの良さなんですね。

右がボビンに巻き取られたベンベルグの糸。左がその糸を綛にしたもの

この糸の束を染めることを、「綛染め」と言います。小ロットに対応しやすく、ムラなく風合い良く染め上げられるのが、綛染のメリットです。

綛染のイメージ。小ロットに対応し、ムラなく風合い良く染められます。

こう見ると、かなり手間がかかる先染めですが、高速織機で生地を織ってから染める「後染め」は糸を強くするためにタテ糸に糊付けをするため、風合いが先染めよりも落ちてしまうんだそうです。たとえ手間や時間がかかっても、品質の良いスーツなどには、軽く、滑らかで機能性にも優れたベンベルグの先染め裏地が良いと、伴さんはおっしゃいます。

撚糸だけではなく、常に糸の在庫をストックしている糸問屋でもある伴さん。山梨ハタオリ産地のハタヤさんから注文を受けた際には、すぐに糸を供給できるように万全の準備をしているそうです。撚糸は、まさに産地の基礎を支える重要な役割なんですね!


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  • ハタオリマチのハタ印

    ハタオリマチのハタ印

    富士山の麓に広がる山梨県富士吉田・西桂通称「ハタオリマチ」は、1000年位上続く技術力の高さが世界的に認められている織物産地です。ところが昨今、織物の技術継承が途絶えてしまいかねない危機的状況にあります。何十世代も前の祖先が脈々と繋げてくれた、このマチをより良い形で次の世代に繋ぐため、私達はマチ全体で新たな挑戦に取組み、その意思の印として「ハタ印」をかかげています。そんな、ハタオリマチの「今」に心を打たれた人々が綴る、ハタ便(ダヨリ)をお届けします。

 

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